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2001年6月議会(2001年6月21日)
鶴田至弘県議の質問と答弁
1―紀伊丹生川ダムについて
鶴田 国土交通省近畿地方整傭局が、過日、建設予定の紀伊丹生川ダム計画を見直して、ダム計画の規模縮小を険討すると発表した。大阪府が丹生川ダムに求めていた日量二十五万トンを日量十三万トンに修正し、和歌山市が日量一・七万トンを必要としていたのをゼロとしたことで、必要とされた水が半分になってしまったことによるもの。私たち共産党議員団は、水需要、とりわけ大阪府の水需要が過大であり、ダム審議会で厳密に見直すべきだと主張してきたところですが、ダム審は調査をされませんでした。その後、大阪府、和歌山市がみずからの見直しとなり、今回の結果に至ったわけです。しかし、国土交通省は、ダム建設の意思は継続し、和歌山県当局も治水のために必要だとしている。いま一度、ダム建設は本当に必要なのかどうか、お尋ねをしていきたい。
まず大阪の水需要の問題―その予測はいまだに過大だと思われます。大阪の計画は、丹生川を除いて日量二百四十万トンの給水計画があります。それに対して、過去最高の水需要が日量二百十二万トン、さらに今回の見直しにより、紀伊丹生川ダムから日量十三万トンを求めて二百五十三万トンの給水能力を持とうというものであります。その十三万トンというのは、大阪府下の水需要の五%にしかなりません。あえて十三万トンが必要だとしても、その量は、紀伊丹生川ダムに求めなくても大阪府内で十分解決できることだと思われるわけです。例えば、十分余っている工業用水の上水への転用、市町村水道の活用で満たされることが各種の資料で読み取れる。したがって、大阪への水を供給するという目的であれば、このダム計画は必ずしも必要でないものと考える。大阪の水問題は大阪が決めることです。給水を和歌山に求めるならば、和歌山県としての正確な認識が必要だ。大阪の水需給をどう考えておられますか。県としても主体的に検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
■ 垣平企画部長 大阪の水需給計画についてお答えをいたします。今回の大阪府宮水道の計画の見直しにつきましては、これまでの一日最大給水量二百六十五万立方メートルを平成二十二年度には二百五十三万立方メートルと下方修正し、その縮小分一日十二万立方メートルを紀の川依存量で縮小するもの、一日十三万立方メートルは紀の川からの必要水量として計画されている。府では、給水区域内市町村の同意を得るとともに、平成十三年二月府議会で広域的水道整備計画の改定及び水道企業条例の改正を行い、厚生労働省の認可を得ており、その計画については尊重すべきものと考えてございます。また、大阪府営水道の紀の川からの取水につきましては、昭和六十二年十二月二十一日に府県間で締結した紀の川利水に関する協定書に基づき対応してまいりたい。
 
鶴田 治水の問題―一つは、丹生川ダム上流にどれだけの降雨量があるのか。ダムは、昭和四十七年九月の台風二十号の際の雨量を百五十年に一回の大きな降雨量として位置づけ、ダム地点でのピーク流量を毎秒千五百トンとして、これに対応するダムということになっている。しかし、幾人かの専門家が、その流域で一秒間の流入量千五百トンとは到底考えられない、大台ケ原並みの雨量ではないか、全く信じられないと言っているところであります。この問題に対して、国土交通省は全く答えていない。
二つ目は、紀の川の基本高水の数値設定の問題です。治水学上でこの数値の設定が最も重要なことだそうですが、基準点にある紀の川船戸での百五十年に一回のピーク時の流量を毎秒一万六千トンとしているのは余りにも過大だとする専門家もいる。実際、紀の川の最大の洪水は一九五九年の伊勢湾台風だそうですが、そのときの船戸での最大の流量は、はんらんした分も含めて毎秒七千百五十トンとされておりますので、ダム計画は実にその二倍を見ているということになります。余りにも過大ではないでしょうか。一説には、この地での基本高水流量は、科学的計算によって一万二千九百トンと考えられ、それだけでも丹生川ダムは不要との見解を表明されている方もいる。それらの説も県として十分研究すべきではないか。
三つ目は、現在の治水能力の評価です。現在、堤防など各所で治水対策が進められ、近畿地方建設局の資料によりますと、現在は堤防によって毎秒一万二千トンを流すことができるということであります。大滝ダムが完成いたしますと、その上に毎秒二千七百トンの調整ができるわけで、合計毎秒一万四千七百トンまでの流量なら十分洪水を防ぐことができることになっています。このような諸説を考えてまいりますと、紀伊丹生川ダムは何のために必要か、治水の面でもあえて必要とされるものではないという思いがする。当局の考えを示していただきたい。
■大山土木部長 ダム計画の根拠となる数値について。ピーク流量につきましては、貯留関数法により決定。その結果、紀の川全体では毎秒一万六千トン、丹生川ダム地点においては毎秒千五百トンの流量を設定したもので、将来、堤防によって防ぐことのできる毎秒一万二千トンを考慮しても過大な計画ではない。
 
鶴田 ダム審議会は、ダムにかわる治水対策、例えば堤防のかさ上げ、遊水地の拡張、川幅の拡大、放水路の建設など、技術的には可能だが、すべてダムより高くつく、あるいは危険性を伴うということで退けられている。しかし、その規模や金額について、さまざまな検討がなされたものだとは思えない。そもそも、紀伊丹生川ダムの降水量が過大に見込まれている点からして基本的な見直しが必要なわけですが、ダムにかわる治水対策は十分に検討の余地がある。県として、丹生川の自然を守る立場からも、国土交通省に対してダム建設にかわる合理的な治水対策を求めるとか、研究し、進言すべきではないか。
■大山土木部長 ダムの代替施策について。ダムも含め堤防や遊水地といったさまざまな手法を総合的に検討した上で、その河川や地域の特性に応じた最も適切な手法で河川の整備を進めていくことが必要であると考えております。紀伊丹生川ダムの建設につきましては、紀の川の治水、利水等のあり方を検討する紀の川流域委員会を国土交通省が設置しておりまして、県としてはその議論を見守ってまいりたい。
 
鶴田 玉川峡の景観について言えば、計画ではその三分の一が水没する。国土交通省は清流にかわってダム湖を観光化するとしている。ダム湖と自然の渓流を比べてダム湖の方がよしとする考えには、到底ついていけない。そもそもこのダム計画は、利水イコールダム、治水イコールダムという思想状況と大型公共事業何でも万歳という二十数年前に発想されたもの。古い時代の発想に固執することなぐ、自然を守ろう、むだな公共事業をやめようと根本的に発想を変えれば、利水にしろ治水にしろ、あえてダムによらなくても十分解決の方法がある。県としていま一度ダム建設を見直すべきではないか。
■大山土木部長 玉川峡の保存について。国土交通省で水需要計画の減少や玉川峡など環境への影響を考慮し、ダム計画の見直しを行い、紀の川流域委員会に提案する予定。
次に新しい発想でダム計画の見直しをとのご質問ですが、紀伊丹生川ダムの建設につきましては、紀の川の治水、利水等のあり方を検討する紀の川流域委員会を国土交通省が設置したところであり、同委員会において議論されることになっております。その後、国土交通省から紀の川河川整備計画案が示された時点で、県としては圭体性を持って適切に協議してまいりたいと考えております。
 
2―和歌山下津港北港と西防沖南北防波堤について
鶴田 西防埋立地に埠頭用地を整備する計画があり、そのゆえをもって西防沖南北の防波堤建設に和歌山県がその建設費七十五億円を負担することになって、一部の事業が進められようとしている。私は過日、この議会においてその不当性をただしたところだが、県が埠頭を建設するのだから、それは受益者として当然だというお話がありました。そこで今回は、果たしてユニットロードターミナルと称される埠頭と埠頭用地が必要なのかどうか、尋ねたい。
■大山土木部長 北港のユニットロードターミナルについて。岸壁背後に十分な広さの荷さばき地が確保される北港沖地区に内貿ユニットロードタターミナルを港湾計画で位置づけている。主に外貿コンテナや在来型の貨物を扱う本港区とは機能を異にするもの。
 
鶴田 和歌山下津港本港の貨物量は平成十二年で二百十一万トンですが、これからの飛躍的な伸びはそれほど考えられないということが従来の議論でしばしば提起されたところであります。本港は、今後の少々の貨物増には十分耐えられるように目下整備されつつあります。貨物取扱量は三百万トンを予定しているが、これは目標であり、扱える貨物量というのはこれよりはるかに上回ると思います。雑賀崎の埋め立てが凍結されていても、万トンバースの活用などで、その能力はまだまだ拡張できます。十三メートルバースも完成し、ガントリークレーンも設置された。この外貿コンテナ船の入港も、平成十一年度で五十八隻、取扱貨物も五万六千トンです。ここの扱い目標は平成二十年前半で七十八万八千トンですから、まだまだ十倍以上を取り扱うこともできる。TSLの話もあるが、和歌山―鹿児島間に超高速で運ばなければならない特急便や生鮮食料品がどれだけあるかを考えると、その実現が果たしてどうなのか、そのような航路が必要なのか、大変疑問。いずれにしろ、本港にユニットロードターミナルという五十万トンの貨物を扱う新たな機能を持った港湾施設をつくらなければならないという理由はない。むだな計画だと言わなければなりません。どんな根拠でこのような計画を持つに至ったのでしょうか。
果たしてそれが必要かどうか、あるいはTSLなるものが実現するかどうかもわからない、このような港湾施設の計画があるというだけで南北防波堤の負担金を和歌山県が払わなければならないというのは、大変不合理な話だ。しかも、既に埠頭の建設に先立って予算は執行されつつあります。南防波堤だけでも、県負担は七十五億円です。北を合わせるとーこれははっきりいたしませんが、百五十億円以上がかかるかもわからない。予定する埠頭用地が住金の埋立地で、県としてはそれ自体に余り金を使っていないからと、そのターミナルの必要性をあいまいにして、安易に防波堤の貧担金に応じていくのは考え直すべきではないか。
■大山土木部長 防波堤への負担について。北港沖南防波堤につきましては、エネルギー港湾制度により電源立地に関連して必要となる防波堤と県の港湾施設に関連して必要となる防波堤を電源立地企業に受益者負担を課しつつ、一体的、計画的に整備するもの。企業合理化促進法並びに港湾法に基づき、電源立地企業として関西電力が全体事業費の二分の一を負担し、国の直轄事業で整備するもの。この防波堤により北港沖地区の水深十メートル岸壁の静穏度を確保することは必要不可欠なことであることから、通常の国直轄事業負担金と同様に応分の負担を行うもの。また北防波堤につきましても、所要の静穏度を確保するために必要不可欠な施設であり、その建設に当たりましては県民の負担が軽減されるよう努めてまいりたい。
 
3―県職員の超過勤務手当について
鶴田 県職員の超過勤務手当について。県庁職員の超過勤務手当が一〇〇%支払われていないという問題をことしの二月議会で村岡議員が取り上げ、総務部長との間で議論がありました。当局の答弁は、支払い方法には改善の余地があるが、労働組合との合意のことだから一〇〇%支払う意思はないというものでした。その後、労働基準監督署の是正勧告や厚生労働省の通達、人事委員会の指導など、この問題に関連する諸機関からの指導がありました。これらの指導に対してどう対処してきたのか、あるいはしていこうとしているのか。
たとえ不支給分が数%であったとしても、職員に労働を命じてその対価を支払わないということは、法律と条例をもって運営されている地方自冶体にあって許されることなのかどうか、根本的な間題があります。この問題に対して平成十三年三月十六日、労働基準監督署から、和歌山県総務部長初め医科大学長、精神保健福祉センター長、並びに子ども・障害者相談センター長に対して、その他の懸案とともに、「すべての対象労働者に対して、平成十二年四月一日に遡及して残業賃金を支払うこと」という是正勧告書が出されました。また五月二日、和歌山県人事委員会委員長から稲山総務部長に対して、「労働基準監督署から超勤手当を支給するよう指導されているという報告を受けた。本委員会としては、超勤手当の支給に関して、労働基準法に基づく適切な支払いを確保するため改善措置をとられるよう指導する」という文書を出しています。監督署からも人事委員会からも、平成十二年にさかのぼって残額を支払うよう勧告や指導を受けたということです。それに対して総務部長は、五月十四日、労働基準監督署に対して、次のような回答をしています。すなわち、県の超勤手当に関するこれまでの経緯を踏まえ、平成十三年度からの超過勤務手当の適切な支払いが確保できるよう、指導に沿った改善を図りましたという返事です。これは、監督署や人事委員会が平成十二年度に遡って未払いのものは払いなさいと勧告や指導をしていることに対して、十三年度からはちゃんとやりますよということで、十二年度分については支払いを拒否している。先ほども申し上げましたが、法律と条例で運宮されている地方公共団体が、法律に反して残業賃金を支払わず、法に基づいて出された勧告や指導を拒否することができるのかどうか、どのような根拠で平成十二年分の残高の支払いを不要とされたのかを示してください。
 
鶴田 厚生労働省が四月六日、都道府県の労働局長に対して、労働者の残業時間を正確に把握して、サービス残業をなくすための相当詳細なガイドラインを示して、それの厳守と、守らなかったときの司法的措置までも明記して通達をしております。総務省もその旨、都道府県に通知をし、それを市町村にも徹底することを県に求めている。この件に関して、国会でも議論がありました。担当副大臣は、「地方公務員の場合でも、正規の勤務時問を超えて勤務を心要とする場合は当然時間外勤務命令によるべきものであり、時間外勤務手当を支給されるべきものである」と。また、その場で具体的に和歌山県の充足率を根拠にした超勤手当の一部不支払い問題についても議論があり、労働組合との協約によって時間外手当の支給をしなくてもよいという特例でもあるのかという質問に、政府参考人は、そのような協定を認める規定は存在しないと答弁しております。このように、厚生労働省の通達、総務省の通達、厚生労働委員会での質疑と国の答弁から見て、和歌山県がとっているいわゆる充足率に基づく超勤手当の支払いの仕方、それによって一〇〇%を支払わなくてもよいという現行制度は明らかに逢法ではないかと思われますが、いかがですか。
ある課では九〇%を支給し、ある課では九九%を支給すというようなのは納得できないことです。総務庁は、各都道府県に超過勤務の正確な時間把握と超勤手当の支給について各市町村に指示徹底を求めています。和歌山県として、現行のような超勤手当の支給方法をとっていれば、恐らく腰が引けて十分な指導にはならないでしょう。十三年から適切にするからいいのだということにはならない。県としては守られていないのですが、市町村にはどういうふうに指導されますか。
人事委員会は、さきに紹介した指導を総務部長に行ったわけですが、いわゆる充足率に基づく支払い方法は相当以前から行われていることをご存じだったと思います。ならば、なぜ今回のような指導を今までに主体的に行ってこなかったのですか。現在も労働基準監督署の勧告は守るべしと強く総務部長を指導すべきだと考えますが、どうお考えですか。
 
4―教科書間題について(要望)
鶴田 新しく教科書を選択する時期になってまいりました。折から、さる歴史教科書の教科書検定の通過とその内容をめぐって、外交問題、また政冶間題にまでなってきております。教科書問題に関心を寄せる一人として、早速、市販本を入手して一読いたしました。そこに書かれた日本の歴史―とりわけ、明冶以降の歴史の叙述は目を疑うばかりでした。日清・日露の戦争は侵略性が薄められ、日本を守るためのやむを得ない正義の戦争となり、太平洋戦争は大東亜戦争と名前を改め、大東亜共栄圏の構想も、その侵略性は否定されました。侵略戦争の精神的支柱とされ、戦後廃止された教育勅語が、近代日本人の人格の背骨をなすものとして、鮮やかに教科書の中に復活しました。真珠湾攻撃以下は、バックに「軍艦マーチ」を流しながら読みたくなるような記述が続きます。一部を紹介いたします。これは、教科書の二百七十六ページに「大東亜戦争(太平洋戦争)」という大項目がありまして、次に「初期の勝利」という小さな見出しから続きます。少し長くなりますが、ご容赦ください。一九四一(昭和十六)年十二月八日午前七時、人々は日本軍が米英軍と戦闘状態に入ったことを臨時ニュースで知った。日本の海軍機動部隊が、ハワイの真珠湾に停泊する米太平洋艦隊を空襲した。そこには、日本軍の空襲を受けて黒煙を上げて沈没していくアメリカの戦艦アリゾナの写真が掲げられています−艦は次々に沈没し、飛行機も片端から炎上して大守戦果をあげた。このことが報道されると、日本国民の気分は一気に高まり、長い日中戦争の陰うつな気分が一変した。第一次世界大戦以降、力をつけてきた日本とアメリカがついに対決することになったのである。同じ日に、日本の陸軍部隊はマレー半島に上陸し、イギリス軍との戦いを開始した。自転車に乗った銀輪部隊を先頭に、日本軍は、ジャングルとゴム林の間をぬって英軍を撃退しながら、シンガポールを目指し快進撃を行った。五十五日間でマレー半島約一千キロを縦断し、翌年二月には、わずか七十日でシンガポールを陥落させ、ついに日本はイギリスの東南アジア支配を崩した。フィリピン・ジャワ・ビルマなどでも、日本は米・蘭・英軍を破り、結局百日ほどで、大勝利のうちに緒戦を制した。これは、数百年にわたる白人の植民地支配にあえいでいた、現地の人々の協力があってこその勝利だった。この日本の緒戦の勝利は、東南アジアやインドの多くの人々に独立への夢と勇気を育んだ。日本政府はこの戦争を大東亜戦争と命名した。−というような調子で書かれていくわけです。そして、この戦争がいかに世界と日本国民に歴史上最大の悲劇を引き起していったかという記述になりますと、これは量的に非常に少なく、淡々とした調子で紹介され、初期の勝利の分量の半分にすぎない状況であります。ただ、歴史をどのようにとらえ、どのように記述するかは、それぞれの自由です。しかし、教科書は、おのずと良識による節度というものがあります。少なくとも、憲法に基づき戦後積み重ねられた国民的な良識による最低の基準があります。確定した歴史的事実に基づき、国民がそこで何を学んだか、共通の認識の上に叙述されるべきものだと思います。そして、それが国際的な問題であれば、なおさら関係国との共通認識を尊重されなければなりません。日本政府は、幾度か日本の近い過去を振り返り、朝鮮や中国に対して反省と謝罪の意思を表明してまいりました。九五年八月十五日、戦後五十周年に当たり、当時の村山首相は次のような談話を発表して太平洋戦争を総括しました。すなわち、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで、国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」として、痛切な反省と心からのおわびを表明したところであります。政府も、これらの言明が今も生きていることは認めています。しかし、この教科書の記述にはその配慮が欠け、外国からの抗議を生むことになったのだと思います。自虐史観を排するとした独特の歴史観によって歴史的事実が一面化され、子供たちの前に提供されようとしているのではないでしょうか。私は、このような外交的、政冶的問題を引き起こす書籍が検定を通過したことを大変残念に思い、国は率直に諸外国の意見に耳を傾けるべきだと感じたわけです。教科書は、このほか多数発行されておりますが、まだ発売されておりませんので読む機会を得ていませんけれども、よりよい教科書が子供たちに与えられるよう切に願うものであります。
 
稲山総務部長 平成十二年度までの紹過勤務手当に関しては、予算の制限のある中で、超過勤務を命令する者とされる者、双方がお互い納得できる支給方法としていわゆる充足率を用いて手当を支給してきたところでありまして、これまでの職員の超過勤務に対する認識などを勘案した過渡的な支給方法であったかと考えており、過去にさかのぼって追加支給を行うことは予定いたしておりません。また充足率の職場間の格差については、不均衡を極力なくすため、年度当初での配分枠の設定や年度途中あるいは年度末に実績を見ながら追加配分するなど、従前の支給方法におきましても努力してきたところでございます。しかし、各所属での発生業務量に差異があったことなどによりまして、結果的に充足率に数%の差が生じたところでございますが、十三年度からは勧告及び指導に沿って、超過勤務手当について所定支払い日に全額一〇〇%支払いするよう改善を図っている。今後、医療現場など各職場の実態把握による適正な予算配分に努めるとともに、超過勤務手当の縮減を含め、超過勤務手当の厳正な運営に一層努めてまいりたい。なお、市町村への指導ということでございますけれども、国からの通知を受けまして、まず市町村みずからが今日的課題でもある、いわゆるサービス残業が生じないよう職員の労働時間の適正な把握に努めるよう通知したところでございまして、その趣旨の徹底を図ってまいりたい。
 
青木人事委員会委員長 五月二日付で行った超過勤務手当の支給に関する指導についてー県職員の超過勤務手当の支給実績は完全支給という本来の姿に年々近づきつつあり、これまでその推移を見守ってきたところ。こうした中にあって、昨年夏以降、和歌山労働基準監督署がこの問題を取り上げたことによりまして、本委員会はその後、同監督署と協議を進める中でこのたびの指導を行った。重ねて強く指導をとのことでございますが、人事委員会といたしましては、さきに行った指導の趣旨が尊重されるべきものと考えている。
 
再質問
鶴田 治水についてー幾つかの数値を出して問題を提起いたしました。私が出した数値の問題が正しいのか正しくないのか、どう思っているのかというのを答えて、反論なら反論していただかなくてはなりません。答えになっていない。もう一度お願いします。それから、代替措置の問題、玉川峡の保存の問題、ダム計画というのはそもそも現時点で全体として見直していかなければならないのではないかという質問に対して、率直に言って県がそういう観点で議論をされていないのではないか。もちろん、国土交通省の方も十分な情報を提供していないんでないかと思うんですけれども、私のようなごくごく素朴な質問に対しても、今後流域委員会での検討を待つということばかりでしょう。和歌山県の主体性というのは一体どこにあるのか。県土、県の領域に対する治水責任というのは、国任せではなくて県がしっかりと持っていかなければならんと思う。自然を守ると、きのうからもありましたけれども、地球環境の問題は県政の柱とするという立場は、やはりダムをつくっていいのかどうか、代替措置はないのかどうかということと深く関連する問題でしょう。代替措置はダムを含めて総合的に研究、検討するという話がありましたけれども、今のような形で流域委員会の結論を待つということだけでは、本当に責任を持った代替措置の検討なんてできないのではないか。玉川峡についてもそうです。国土交通省の提案を見守ると言っているんですけれども、あのような狭い渓谷の上流に大きなダムをつくったら渓流がどうなっていくかというのは、これは私でも、ほぼ見当がつくんです。これで、県としても流域委員会の結論を待って、後ほどに国土交通省から河川計画が出てきたら、それでもって県は県としての意見を申し述べていくというようなことでは、本当に県の治水問題、あるいは自然環境に対して責任を持った態度とは言えないと思う。そういう点で、いま一度、この問題に対して県としてどう責任を持って対応していくつもりなのか。ダムなどつくらずに治水問題も解決できるように努めるのが本来の仕事ではないかと思いますので、基本的な態度を示してください。
■大山土木部長 紀伊丹生川ダム=過大な計画ではないと承知してございますが、ダム計画の根拠となる数値につきましても、各分野の専門家から成る紀の川流域委員会の中で議論されるものであると承知している。同委員会では、国土交通省のダム計画の見直し案に基づき議論がなされるものと承知しており、同委員会での結論を踏まえて、国土交通省から紀の川河川整備計画案が示されますので、県といたしましても、責任を持って、主体性を持って適切に協議してまいります。
 
鶴田 北港整備の問題については、港湾機能と貨物量との関係で質問いたしました。そういうのを北港を当てにしなくてもいいんじゃないかという質問です。そこのところ、なぜ北港がなければならんのか。貨物量との関係で、ぜひ示していただきたいと思います。私は、必要ないと思うからです。もしこれが必要でなければ防波堤の負担金というのはしなくてもいいわけで、少なくとも七十五億、もう一つ北側の防波堤をつくろうとすれば、あと数十億の金も負担しなくても済むということになりますから、ぜひそこをはっきりさせていただきたい。
■大山土木部長 北港整備=和歌山下津港が陸上交通と海上交通の結節点となるという優位性を生かして、物流拠点として発展し、和歌山が活性化していくためには、海運へのモーダルシフトによる増加が予測される内貿ユニットロード貨物を円滑に取り扱う必要があります。北港全体では五十万トンという量を予測しているわけですが、そういったために岸壁背後に十分な広さの荷さばき地が確保される北港沖地区で内貿ユニットロードターミナルを港湾計画に位置づけておりまして、和歌山の発展にとって必要なものであると考えている。このユニットロードターミナルの所要の静穏度を確保するために北港沖南北防波堤は必要不可欠だということでございますので、これについて県が負担をしていくべきものと考えている。
 
鶴田 超勤の問題について、知事と人事委員長にお尋ねをいたします。過去にさかのぼって支払う予定がないということでありますが、私が質問いたしましたのは、監督署も払いなさいと言うている、厚生労働省も払えと言つている、それを認めて人事委員会も払えと言うている、国会の議論でも労使の合意という形で払わなくてもいいというような条項はないんだよと。だから、それらの関係で、それらの指導や勧告が間逢っているんだったら間違っていると言ってください。しかし、それを抜きにして、払わなくてもいいんだ、労使の合意があるからだということでは、これは納得いかない話です。予算がない、不景気の中で職員も余りうるさく言ってこない、来年からちゃんとすみからいいじゃないかという思いが胸の中にあったとしたら、それはやはり間達いだと思います。そういうことがもし通用すると、それが民間へ出るとどういうことになるかということです。労使の間で、金もないんだ、不況のさなかだということで、どんどんサービス残業が蔓延していくことを認めていくことになりますよね。だから、そういう立場でも、官としてやはり守るべきところはきちっと守らなければならんのではないかと思うんです。それで、総務部長の答弁は納得できないことです。ひとつ、知事の方から回答をいただきたいと思います。労基法の三十七条、百十五条はもう十分承知のことだと思いますから、ひとつそういう立場に立ってお答えをいただきたいと思います。人事委員会委員長にお尋ねいたします。総務部長は、あなたの指導を、少なくとも十二年度分の支払いについては拒否されました。どういうふうに思われますか、あれでいいと思いますか。もしそうでないとするならば、この場で総務部長の態度を指導してやっていただきたい。
■木村知事 ただいまのご質問、非常に難しい問題で、私も真撃に受けとめております。ただ、私の存じているところでは、和歌山県の超勤につきましては、支給額の実態といたしましては、従来から他の自冶体と大きく異なるものではなかったということを承知している。ただ、労働基準監督署の指導もあり、今年度からは手続面等で疑義が生じることのないよう前向きに改めた。現在、ご案内のように、小泉内閣の構造改革の中で公務員制度についても大変大きな見直しが行われ、この中で民間の非常に厳しい目というものを意識した改革になってくると思われる。現下の厳しい財政状況、そして県民の方々の感情、そうしたものを勘案した場合、なかなか手続面だけの不備をもって、さかのぼって超過勤務手当を支給していくことは非常に難しい。
 
■青木人事委員会委員長 人事委員会がさきに行った指摘に対しまして、県当局がそれに従わないことに対してどのように考えているかというお尋ねでございますが、人事委員会といたしましては、先ほどお答えいたしましたとおり、さきに行った指導の趣旨が尊重されるべきであると考えている。
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